疾患について

disease

1.側弯症におけるリハビリテーション

1-1. 一般的な側弯症のリハビリ

ストレッチ

縮こまった筋肉を伸ばし、体の柔軟性を高めます。

特に、背骨の周囲の筋肉や軟部組織の柔軟性を高めるストレッチは重要です。

筋力トレーニング

体幹や背筋など、姿勢を維持するために必要な筋肉を強化します。

筋肉のバランスを整え、背骨への負担を軽減します。

姿勢改善運動

正しい姿勢を意識することで、側弯症の進行を抑制します。

日常生活の中で、正しい姿勢を保つことを習慣化することが大切です。

1-2. 当施設における側弯症のリハビリ

re-HAVEでは、利用者様一人ひとりの症状や身体状況、生活背景に合わせて、絶対的な時間と質を担保した最適なリハビリプログラムを作成し、提供しています。

リハビリ専門家としての姿勢評価

体の歪みや姿勢を詳細に分析します。

個々に合わせた運動プログラム

評価結果に基づき、関節可動域改善、ストレッチ、拘縮予防、体幹・下肢筋力強化、バランス練習など利用者様一人ひとりの症状や体力に合わせた最適な運動プログラムを作成します。

日常生活指導

正しい姿勢の取り方、日常生活における注意点などを分かりやすく指導します。

ご検討中の方へ

機能性側弯症と診断された方、もしくはその他の側弯症と診断され二次的に生じている症状(例:歩くのがふらつく等)でお困りの方、現在のリハビリに満足されていないなどお悩みの方は、お一人で悩まずに、お気軽に当施設にご相談ください。

2.側弯症とは

側弯症とは、背骨が体の正面から見て左右に曲がり、ねじれを伴っている状態を指します。 通常、背骨は矢状面において緩やかなS字カーブを描いていますが、側弯症ではこのカーブが異常な角度で曲がっていたり、ねじれていたりするため、身体のバランスが崩れ、様々な症状が現れることがあります。

側弯症は、その原因によって大きく以下の3つに分類されます。

2-1. 機能性側弯

背骨自体には異常がなく、姿勢が悪くなったり、筋肉のバランスが崩れたりすることで引き起こされる側弯症です。

原因としては、下記のようなものがあります。

姿勢不良
長時間悪い姿勢を続けることで、筋肉の緊張や弛緩が生じ、側弯症を引き起こすことがあります。
脚長差
両足の長さに違いがあると、骨盤が傾き、その影響で背骨が曲がる場合があります。

痛みによる回避
腰痛やぎっくり腰などによって、痛みをかばうような姿勢を続けることで、側弯症になることがあります。
機能性側弯は、原因となる姿勢や習慣を改善することで、症状が改善される可能性があります。

2-2. 構築性側弯

背骨自体に形態的な異常があるために起こる側弯症です。

原因としては、下記のようなものがあります。

先天性側弯症
生まれつき背骨の形成異常がある場合に起こります。
症候性側弯症
神経線維腫症などの病気に伴って起こる側弯症です。

神経・筋原性側弯症
脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの神経・筋疾患によって、筋肉のバランスが崩れ、背骨が変形する場合に起こります。
特発性側弯症
最も頻度の高い側弯症ですが、明確な原因が分かっていません。10歳前後の成長期に発症することが多く、特に女子に多く見られます。
特発性側弯症とは

構築性側弯症のうち原因不明のものを特発性側弯症といいます。

小児期に多く見られ、側弯症全体の約8割を占め、発症年齢によって分類されます。

乳児期:0~3歳以下男児に多く自然と治る場合も多い
学童期:4~9歳以下進行する場合が多い
思春期:10歳以上圧倒的に女子に多い

特発性側弯症の発生率は2〜3%で、体の発育や成長が止まるまで進行し続けることが多いです。

特に成長が急な時期に側弯の進行が強くみられ、男児なら声変り、女児なら初潮を迎え身長の伸びが止まると側弯の進行も抑えられる傾向にあります。

参照: 日本側弯症学会 側弯症TOWN

特発性側弯症の原因は分かっていません

前述したように、特発性側弯症は未だに原因不明とされています。

生活習慣との関連を調査した研究によると、 通学鞄の種類、鞄の重さ、楽器の演奏、勉強時間、寝る姿勢、睡眠時間、ベッドか布団かなどは側弯症と有意な関連はありませんでした。

関連があったのは女の子、痩せてる子、両親のいずれかに側弯症があることです。

但し、低 BMI が続いた結果として側弯症になったのか、側弯症だから低 BMI なのかは分かっていません。

最新の研究ではやせ型(BM18.5未満)は側弯症の発症に影響するが重症化には影響しないこと、すべての栄養素・食品摂取量と側弯症の間には明確な関係がないことが分かっています。

このため特発性側弯症の発症原因はまだ分かってはいないのです。

2-3. 大人の側弯症(変性側弯症)

小児期に側弯症と診断されていなかった人が、大人になってから発症する側弯症です。

加齢に伴う背骨の変形や、椎間板の変性などが原因で起こることが多く、腰痛や神経症状を伴う場合もあります。

3. 側弯症の症状

側弯症の症状は、弯曲の程度や部位、原因、年齢などによって大きく異なり、軽度の側弯症では、自覚症状がほとんどない場合もあります。

3-1. 側弯症の代表的な症状

側弯症では、背骨が横に曲がるだけでなく、ねじれを伴うことが多いため、身体の左右のバランスが崩れ、以下のような症状が現れることがあります。

  • 肩の高さの違い
  • 肩甲骨の出っ張りの左右差
  • ウエストラインの左右非対称
  • 肋骨の突出
  • 骨盤の傾き
  • 腰の位置の左右差
  • 体幹のバランス不良

3-2. 側弯症に伴う症状

側弯症が進行すると、身体の様々な部位に負担がかかり、下記のような症状が現れることがあります。

腰痛
背骨の歪みによって、腰の筋肉や関節に負担がかかり、腰痛を引き起こすことがあります。
背部痛
背骨の歪みによって、背中の筋肉や関節に負担がかかり、背部痛を引き起こすことがあります。

肩こり
背骨の歪みによって、肩や首の筋肉が緊張し、肩こりを引き起こすことがあります。
呼吸困難
弯曲が強い場合、肺が圧迫され、呼吸困難を引き起こすことがあります。

神経症状
側弯症が進行すると、脊髄や神経が圧迫され、しびれや麻痺などの神経症状を引き起こすことがあります。
消化器症状
側弯症によって内臓が圧迫され、便秘や消化不良などの消化器症状を引き起こすことがあります。

心理的な影響
体の歪みが気になることで、精神的なストレスを感じたり、周囲の目が気になって自分に自信が持てなくなったりすることがあります。

側弯症は、早期発見・早期治療が重要です。 見た目に変化が出ていなくても、身体の不調を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

4.側弯症の検査方法

側弯症の検査では、まず問診を行い、いつ頃から症状が出始めたのか、どのような症状があるのか、家族に側弯症の人がいるかなどを確認します。 その後、以下の検査を組み合わせて側弯症の程度や原因を詳しく調べていきます。

4-1. 視診・触診

姿勢の観察

立位(直立)と座位での姿勢を観察し、肩の高さ、肩甲骨や腰の位置、体の傾きなどを確認します。

背骨のライン、左右のバランス、皮膚の状態(しわ、色素沈着など)も併せて確認します。

前屈テスト(アダムズ前方屈曲テスト)

両足を揃えて直立し、上半身をゆっくりと前屈させます。

この時、背中の高さに左右差が見られる場合は、側弯症の可能性があります。

このテストにより、側弯症の有無だけでなく、弯曲の程度をある程度推測することができます。

触診

背骨の突起の並びや、筋肉の緊張などを確認します。

4-2. レントゲン検査

側弯症の診断に最も重要な検査です。 立った状態と寝た状態で、体の正面と側面から背骨全体を撮影します。

弯曲の角度測定 (コブ角)

レントゲン画像上で、側弯の頂点となる椎骨と、その上下の椎骨の中心点を結ぶ線から、それぞれ垂線を引いて交差角を測ります。

この角度を「コブ角」と呼び、コブ角が10度以上の場合に側弯症と診断されます。

弯曲の種類

弯曲の方向や形状から、側弯症の種類を判断します。

回転の有無

椎骨の回転の有無や程度を評価します。

回転が強い場合は、変形が進行する可能性が高いため、注意が必要です。

骨成熟度

骨年齢を評価し、骨の成長がどの程度進んでいるかを調べます。

成長期かどうかで治療方針が変わるため、重要な指標となります。

4-3. その他の検査

脊髄造影検査

脊髄腫瘍や脊髄空洞症など、神経疾患が原因で側弯症が疑われる場合に実施されます。

MRI検査

脊髄や神経の病変、骨や軟骨の状態などを詳しく調べる場合に実施されます。

CT検査

骨の形態をより立体的に把握する必要がある場合に実施されます。

肺機能検査

側弯症が呼吸機能に影響を与えているかどうかを調べるために実施されることがあります。

5. 側弯症の治療方法

側弯症の治療方法は、弯曲の程度、年齢、成長段階、症状、原因などを考慮して決定されます。

経過観察

コブ角が小さく、進行性がないと判断された場合は、定期的なレントゲン検査などで経過観察を行います。

成長期が終了した軽度の側弯症の場合も、経過観察となることが多いです。

装置療法 (コルセット療法)

成長期で、コブ角が20~40度程度、かつ進行性のある場合に有効な治療法です。

コルセットを装着することで、背骨の弯曲を矯正し、進行を抑制することを目的とします。

コルセットの種類や装着時間は、側弯症の程度や生活スタイルに合わせて決定されます。

コルセット療法の効果を高めるためには、指示された時間 (1日18時間以上の場合もある) を守って装着することが重要です。

手術療法

コブ角が40~50度以上と大きく、成長期を終えても進行する可能性が高い場合に検討されます。

神経症状 (しびれ、麻痺、膀胱直腸障害など) を伴う場合も、手術が適応となることがあります。

手術では、金属製のインプラント (スクリュー、ロッド、フックなど) を用いて、背骨を矯正・固定し、弯曲を改善します。

手術には、合併症のリスクもあるため、手術のメリットとデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断する必要があります。

リハビリテーション

リハビリテーションは、側弯症の治療において重要な役割を担っています。

特に、経過観察や装具療法を行う場合は、リハビリテーションが治療の中心となるケースも少なくありません。

リハビリテーションの目的は、下記の通りです。

筋力強化
体幹や背筋などを強化することで、姿勢を安定させ、背骨への負担を軽減します。
柔軟性向上
ストレッチなどで体の柔軟性を高めることで、関節の動きを改善し、姿勢の矯正を促します。
バランス能力向上
バランス能力を高めることで、転倒のリスクを減らし、身体の安定性を高めます。
呼吸機能改善
呼吸 exercises などで呼吸筋を鍛え、呼吸機能の改善を図ります。
姿勢指導
日常生活での正しい姿勢や動作を指導し、側弯症の進行予防を促します。

側弯症の治療は、一人ひとりの状態に合わせて最適な方法を選択することが重要です。 医師とよく相談し、適切な治療法を選択しましょう。

執筆者

木村 和夏

木村 和夏

セラピストリーダー/理学療法士

2003年 理学療法士免許を取得。急性期・回復期・維持期病院、および生活期におけるリハビリテーションの臨床現場で理学療法士として勤務。さらに、未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センターや国際協力機構での職務を経験。
2025年 プライベートSTROKEリハビリスタジオ re-HAVE セラピストリーダーに就任。
これまで、脳血管・運動器疾患を中心に幅広いリハビリテーションの臨床場面に従事。修士・博士課程や研究センターでは、脳卒中後片麻痺者の歩行動作やバランス能力、上肢の運動機能に関する研究に取り組む。