パーキンソン病に特徴的な歩行パターンとは?

パーキンソン病の詳細についてはこちらをご覧ください
https://re-have.jp/disease-detail/post-550/
- 「歩き始めようとすると、足が出ない」
「歩き出せなくて焦ってしまい、転びそうになることが何度もある」
「急に動けなくなるから、外出が怖くなった」
「狭い場所や方向転換の時に、突然止まってしまって動けなくなる」
「すくみ足が出ると、イライラしてしまう」
「足を引きずってしまい、歩くのが遅くなった」
「一度歩き始めると、だんだん速くなってしまって止まれない」
「コントロールが効かず、転倒しそうになる」
これらはパーキンソン病の方からよく聞かれる訴えです。
日本国内で *約25万人がパーキンソン病に罹患しているとされており、身体の運動機能に深刻な影響を及ぼす神経変性疾患の一つです。
* 参考:厚生労働省. 令和5年患者調査傷病分類別(傷病別年次推移表)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/r05syobyo.pdf
その多くの方が経験する歩行障害は、日常生活の自立や安全性を著しく損ない、転倒リスクの増加や生活の質の低下につながる重要な症状として知られています。
本コラムでは、パーキンソン病に特有の歩行パターンの特徴を解説します。
パーキンソン病に特徴的な歩行パターン
パーキンソン病に見られる代表的な歩行パターンを以下に示します。
- すくみ足歩行
-
- 歩き出そうとしても足が前に出なかったり、途中で突然足が止まってしまう現象を指します
- 歩き出しや方向転換時に足が前に出にくくなります。特に「歩き始め」「狭い場所を通るとき」「方向転換するとき」に起こりやすいです。
- 精神的ストレスや環境の変化、例えば、焦りや緊張、混雑した場所、障害物の存在などで誘発されやすいです。
- 小刻み歩行(すり足歩行)
-
- 歩幅が著しく小さくなり、歩く速度が遅くなる状態を指します。時に「すり足」になります。
- 多くの場合、歩き進むにつれてさらに歩幅が狭くなる傾向があります。
- 突進歩行
-
- 足を前に出す幅が小さくなり、次第にその幅がさらに縮まりながら前のめりで突進していくように歩くのが速くなります
- そして、止まろうとしても足が勝手に動き続けるため止まりにくくなります。
- 姿勢反射障害
-
- 立位や歩行中、つまずきなどのバランスを崩した時の修正が遅い・不十分なため、足を素早く踏み出して支える反応が出にくくなります。そのため転倒のリスクが高くなります。
- 前傾姿勢と姿勢の不安定性
-
- 頭を前に出した前かがみ姿勢になり、重心が前方に偏ることにより、つまずきやすくなります。
- 姿勢反射障害が背景にあり、ご本人様はまっすぐ立っているつもりでも前傾になっていることが多いです。
- 腕の振りの減少
-
- 歩行中の腕の振りが少なくなります。
- 初期には症状が強く出る片側において腕の振りが減少することが多いです。
- 体幹の回旋が減り、姿勢の安定性も低下します
- 二重課題での障害
-
話しながら歩くなどの2つのタスクを同時に行うことが難しくなります。
以上のような特徴により、転倒のリスクの増加したり一人で歩くことが難しくなることで、日常生活や社会参加に支障が出ることも多くあります。
これらの特徴の中でも「小刻み歩行」は、パーキンソン病の初期より持続的に見られる典型的な歩行障害で、臨床現場で多くみられます。
また、「すくみ足」は最も問題となりやすい歩行パターンで、転倒リスクが高く日常生活の大きな制限要因となるため、ご本人様やご家族様の大きな悩みとなっているとされます。
次は、これらの小刻み歩行とすくみ足の症状に対するリハビリの取り組みに焦点を当てていきます。
小刻み歩行・すくみ足歩行に対するリハビリ
以下に、小刻み歩行・すくみ足歩行への代表的なリハビリアプローチを紹介します。
1. 聴覚的・視覚的キューイング(Cueing)を用いた歩行トレーニング
- キューイング(cueing)とは?
-
音・光などの外部刺激を利用して、歩行のリズムや歩幅などを改善する方法です。
パーキンソン病では内部の運動リズム生成が障害されるため、外部からの刺激で「歩くテンポ」を作り出し、脳の運動制御を補助する役割を果たします。
- 聴覚的キュー
- メトロノーム音や音楽、リズム音などに合わせて歩く練習を行うことで、歩行時のリズムを促し、歩行速度、歩幅、すくみの頻度や持続時間の改善を図ります。
- 視覚的キュー
- 床に貼ったテープや光のライン・マーカー、杖や歩行器からのレーザーライン、矢印など、視覚的に歩幅を促すことで、すくみ足の解消や、歩行開始を促したり、方向転換時の安定性向上を図ります。
※すくみ足歩行に対するキューイングは、科学的に効果があることが複数の研究で示されています。特に外的キューイングは、すくみ足歩行の軽減や歩行速度・リズムの改善に有効とされ、国際的なリハビリテーションガイドラインでも推奨されており、複数のRCT (ランダム化比較試験) やシステマティックレビューでも効果が示されております。
2. バランストレーニング・姿勢コントロール練習
体幹の安定性、姿勢反射やバランス感覚を高めることを目的とし実施します。
これらの改善により、転倒の予防につながります。また、歩行安定性が向上することで、すくみ足歩行の減少に寄与するという報告もあります。
3. 障害物回避・方向転換トレーニング
曲がる動作、狭い通路の通過、障害物を避ける練習を安全な環境で実施します。
徐々に複雑な状況にしたり、予測できない状況へ移行させていくことで、実際の生活場面に対応できるように工夫します。
環境を変えた歩行訓練(変化刺激を含む)
4. 課題特異的トレーニング
実際にすくみ足歩行が起こりやすい場面や環境で、同じ条件の歩行課題を繰り返し練習します。これにより、実際の生活場面での歩行パターンの改善とすくみ足歩行の減少を目的とします。
例えば、ドアや狭い通路の通過、立ち上がったところから歩き始める、180°の方向転換を行うなど。
また、徐々に課題の難易度を上げること、必要に応じて視覚・聴覚キューイングと併用すること、同一条件での反復練習や異なる条件での練習もオプションです。
5. デュアルタスク練習
歩行中に別の認知課題を同時に行い、認知・運動両面の注意配分能力の改善を目指します。すくみ足の減少や歩行の安定化に効果がある可能性が研究によって示されています。
小刻み歩行やすくみ足歩行の悩みは、早めの対策と適切なトレーニングが改善の鍵です。
re-HAVEでは、達成したい日常生活の動作や趣味・社会活動の目標に向けて、一人ひとりに合わせた最適なリハビリプランをマンツーマンで丁寧に実施しています。
どんな些細なお悩みでも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらから
※施設の見学・無料カウンセリング・リハビリ体験も随時受付中です。