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運動学習  Motor Learning —出来なかったことが出来るようになるために大事なことは?—

運動学習  Motor Learning  —出来なかったことが出来るようになるために大事なことは?—

「前みたいに歩けるようになりたい」
「もう一度、手を動かしたい」

そんな思いを支えてくれるのが、“運動学習”という体と脳の仕組みです。

本コラムでは、運動学習とは何か、その基本的な仕組みとリハビリへの応用についてお伝えします。

運動学習とは?

  • 運動学習とは、練習や経験を通して、動作や運動技能を新たに習得したり、再び身につけたりすることで、動作や運動技能において比較的永続的な変化が生じる過程を指します。
  • 簡単に言うと、くり返し練習することで、体の動かし方が上手になったり、できなかった動きができるようになったりする過程のことです。
  • 意識して覚える記憶(顕在記憶)と、無意識に身につく記憶(潜在記憶)の働きによって、運動技能が無意識にできるようになります。
  • これは、神経系の障害やケガからの回復や向上において、リハビリを行う上で非常に重要な要素であり、日常生活で必要な機能を取り戻したり、新たな課題に適応したりすることを可能にします。


では、実際に運動学習がどのようなステップを経て進んでいくのかを、モデルに基づいて確認してみましょう。

運動学習の3段階モデル

1967年にFitts & Posnerが提唱した、運動学習の過程を3つの段階に分けるモデルが知られています。

1. 認知段階(Cognitive Stage)
— 動作の目的や方法を「頭で理解する」段階
— ミスが多く、動きはぎこちない
— 他者からの言葉での説明やデモンストレーションが重要
— 口頭指示による陳述手続きと運動の相互作用
— 数分~数時間持続
2. 連合段階(Associative Stage)
— 動作がある程度できるようになり、試行錯誤を通じて正確さや安定性が高まる段階
— フィードバックを活かして、自分で動作を調整できるようになる
— トレーニング強度と頻度に依存
— 無意識に身につく記憶のメカニズムに引き継ぐと完了
— 数日~数年持続
3. 自動化段階(Autonomous Stage)
— 動作が無意識にスムーズに行えるようになる段階。
— 注意を向けずに実行できるようになり、他のことにも意識を向けられる
— 自動性の獲得によりパフォーマンスは速く、努力なく、的確になる
— 練習量と特異性 (i.e. 特定の環境下など)に依存する


リハビリで例えると、

最初は「どんな動きをするのか」から始まり(認知段階)、

練習を通じて少しずつ正確にできるようになり(連合段階)、

最終的には日常生活の中で自然に動けるようになる(自動化段階)ことを目指します。

運動学習は段階的に進んでいくことがわかりましたが、そのプロセスをよりスムーズに、効果的に進めるにはどうすればよいのでしょうか?
ここからは、運動学習を支える「原則」についてご紹介します。

運動学習の基本的な原則

以下は、リハビリ場面でよく使われる運動学習の原則です。

1. 反復の原則

同じ動作を繰り返すことで、脳と身体がその動きを覚え、安定したスキルになります。

例)毎日歩行練習をすることで、バランスやタイミングが向上する。

2. フィードバックの原則

行った運動に対して、外部からの情報 (声かけ、ビデオでチェック) を受けると、正しい動作の学習が促進されます。内的フィードバック(自分で感じる)と外的フィードバック(他人が教える)があります。

3. 課題指向性の原則

実際の生活で必要な動作(歩行、食事動作など)を練習する方が学習効果がより高いと言われています。

例)ただ足を動かすよりも、「歩いてトイレに行く練習」をする方が実用的なスキルになる。

4. 段階的難易度の原則

学習は、簡単→難しい、支えあり→支えなしなど、段階的にレベルを上げることで効率よく進みます。成功体験を積みながら少しずつ難しい課題にチャレンジしていきます。

5. 動機づけと集中の原則

本人が「やりたい」と思い、集中できている時ほど学習効果が高いです。

無理にやらされるより、自主的な練習の方が脳が変化しやすいです。

では、こうした原則は、実際のリハビリの場面でどのように活かされているのでしょうか?

ここからは、リハビリにおける応用例を通して、より実践的な理解を深めていきます。

運動学習のリハビリにおける例

例①:脳卒中後の歩行練習
片麻痺になった方が、歩き方を再び学ぶために、平行棒の中で足の出し方や体重移動を繰り返す練習を行います。
最初はセラピストの介助が必要でも、繰り返すことで脳が新しい運動パターンを覚えていきます。

例②:手のリハビリ(上肢機能の再獲得)
脳卒中や外傷後に動かしづらくなった手で、コップを持つ・ボタンを留める・箸を使うなどの練習を行います。
反復することで、細かい指の動きや力加減を再びコントロールを学んでいきます。


例③:転倒予防のためのバランス練習

高齢者や神経疾患のある方が、片足立ち・段差昇降・不安定な床面でのバランス練習を行う。

これにより、姿勢制御能力が向上し、転倒しにくい体の動かし方を学習する。


例④:パーキンソン病の方の歩行練習

小刻み歩行やすくみ足の症状に対して、リズムに合わせたステップ練習や音に合わせた歩行練習を行います。

外部の刺激を利用することで、新しい動作方法の獲得を目指します。


どの例も「何度も練習して体が覚える」という運動学習の基本原則に基づいています。

運動学習は、**脳の神経可塑性 を活かしながら、機能回復や代償動作の獲得を目指します。

 **脳の神経可塑性についてはこちらをご参照下さい↓




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