脳卒中の後遺症によって「つまずきやすい人」に共通する5つの特徴とは? —足部のクリアランス (足の裏と地面の間の距離) の低下—

- 「歩いているとつま先足が引っかかる…」
「つま先があがらず引きずって歩いてしまう」
「自宅の廊下で何度もつまずいてしまう…」
「足のつま先がちょっとした段差に引っ掛かってこけそうになる」
「足がひっかかりそうで注意して歩くから疲れやすい」
「足をかばって歩いていたら腰がいたくなった」
そんなお悩みやご経験はありませんか?
脳卒中後の片麻痺を抱える方の多くが、日常生活の中で「つまずきやすさ」を訴えます。
つまずいて転けると、ケガや骨折、入院となるリスクがあり、生活の質(QOL)にも大きく影響します。
では、理学療法士として日々の臨床から見えてくる「つまずきやすい人」に共通する特徴とは何でしょうか?
今回は、**歩行中の足部のクリアランス低下**という問題から5つの特徴に絞って解説します。
- **歩行中の足部のクリアランスとは?
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歩行時、足を前に振り出す際の、足の裏 (特につま先) と地面の間との距離のことです。
この距離が十分でないとつま先が地面に引っかかりやすくなり、転倒の原因となります。
反対に、この距離が十分にあると、地面に引っかかることなくスムーズに足を振り出すことができます。
つまずきやすい主な原因 —足部のクリアランス低下-
- 1. 足関節背屈筋の麻痺・筋力低下
- 脳卒中により皮質脊髄路が損傷されることで、足を持ち上げる足関節背屈の働きが障害され、歩行時につま先を十分に上げることができなくなります。
その結果、足首が地面に向かって垂れ下がり (フットドロップ)、引っ掛かりやすくなります。
- 2. 足関節底屈筋群の痙縮・筋緊張亢進
- ふくらはぎの筋肉の痙縮 (筋緊張の異常) が足首を下に引っ張ることにより、足首を上げる方向への動きを妨げます。
- 3. 拘縮・筋短縮
- 長期間の不動や筋緊張が高い状態により、足首周囲の筋肉が短縮したり、足の関節が硬くなることで、足首を上に上げる可動域が制限されます。
- 4. 感覚障害
- 深部感覚(関節位置覚)鈍いと、自分の足がどこにあるのか分かりにくくなり、認識と実際の足の運びに誤差が生じることで、足が「思っていたより上がっていなかった」ためにつまずくことがあります。
感覚が分かりにくいことで、目で足元をみて代償するケースも多いですが、視覚に頼りすぎるようになると常に足元に注意して歩かなければならなくなります。
- 5. 運動制御・協調運動の障害
- 脳卒中の後遺症によって脳からの運動指令が障害されることで、選択的に足首を上げる運動命令が難しくなったり、拮抗筋の同時収縮 (足首を上げる筋肉と下げる筋肉が同時に働いてしまう)が起こりスムーズに足首を上げることが難しくなったり、適切なタイミングで足首を上げる動きができなくなります。
以上のように、脳卒中後の足のつまずきやすさは、単に”運動麻痺”や”筋力が弱い”だけでなく、痙縮、運動制御障害、感覚障害など、複数の要因が関連しています。
理学療法士としては、評価により各個人における問題点や特徴を的確に把握することにより、つまずきによる転倒を予防することや歩行能力を改善するために、個々の課題に合わせたリハビリプログラムを提供いたします。
「つまずき」に対するリハビリ
以下に、つまずきを予防・改善するための主なリハビリの方法をご紹介します。
1. 神経筋再教育・筋力増強トレーニング
前脛骨筋 (足首背屈筋群) の運動麻痺や筋力を改善し、足をしっかり持ち上げられるように運動を行ったり、電気刺激療法を用いて筋肉の活動を促します。
2. 関節可動域練習・ストレッチング (特にアキレス腱と底屈筋群)
ふくらはぎの筋肉 (底屈筋群) の過剰な緊張を緩めたり、足関節の硬さ (拘縮)やふくらはぎの筋肉の硬さを予防・改善することで、背屈の可動域を最大限に確保します。
3. 歩行練習 (短下肢装具の利用を含む)
実際の歩く動作の中で、足関節背屈を意識し反復練習することで、歩行パターンを習得します。
短下肢装具 (AFO) を用いて足首を保持し、つま先から接地するのを防止します。
4. 機能的電気刺激療法 (FES)
歩行中の足を前に振り出すときに前脛骨筋を電気的に刺激して足関節背屈を促します。
「つまずき」は日常生活の質を大きく左右する重要な課題となるため、つまずく原因やリスク因子を見つけ出し、適切なリハビリを行うことで転倒を防ぐことが生活の質の向上につながります。
私たちのリハビリ施設では、個々の状態に応じた評価と、科学的根拠に基づくアプローチで、安全で自立した歩行の実現をサポートしています。
もし、歩行中のつまずきや足の運びに不安を感じている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
皆さんの歩行動作がより安全で快適になるよう、専門スタッフが丁寧にサポートし最適なリハビリプランをご提案いたします。
re-HAVEでは、ご利用者様のお困りごとや課題、達成したい目標に合わせたオーダーメイドのリハビリを完全マンツーマンで実施しています。
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