【脳梗塞・脳出血後片麻痺のリハビリ】分回し歩行はなぜ起こる?

- 脳卒中後遺症で麻痺のある方が歩こうとすると、麻痺している足が・・・
- ― 足が外に回して出てしまう
― つまづきやすい
― まっすぐ前に出せない
― 突っ張って動かしにくい
……そんな経験はありませんか?
さらに、”麻痺側と反対側の足や腰が痛くなり長く歩けない”、 ”ちゃんと歩こうとしているのにうまくいかない” と不安やもどかしさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
このコラムでは、そのようなお悩みに寄り添いながら、原因と対策についてわかりやすくご紹介します。
脳卒中後片麻痺者における分回し歩行とは?

分回し歩行とは、麻痺した足を前に振り出す際に外側へ円を描くように振り回す歩き方で、足が地面に引っかかるのを防ぐための歩行パターンです。
この分回し歩行の原因を見る前に、「正常な歩行」ではどのように足を振り出しているか見ていきます。
- 正常歩行における遊脚期(足が地面から離れている時)の動き
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正常な歩く動作では、足を前に振り出す際に、振り出す足の膝は曲がり、足首は上方向(背屈)に曲がります。
これは本質的には、足を折りたたみ短くすることで足が地面に引っかからないようにするための動きです。*図:Grazia Cicirelli らによる ‘Gait Cycle phases and sub‑phases’(CC‑BY 4.0)より引用
脳卒中後片麻痺者における分回し歩行の原因
「分回し歩行」は、脳卒中後の歩行で多く見られる特徴的な歩行パターンの1つです。
なぜこのような歩き方になってしまうのでしょうか?以下が主な原因です。
1. 運動麻痺・筋力低下
- 股関節屈筋の運動麻痺・筋力低下:脚を前に持ち上げにくくなる。
- 膝関節屈筋の運動麻痺・筋力低下:膝を十分に曲げられないため、脚が引っかかる。
- 足関節背屈筋(前脛骨筋)の運動麻痺・筋力低下:つま先が上がらず足が下を向いたままの状態である「下垂足」により、脚を横に振り回すことで地面との接触を回避する。
2. 痙縮(筋肉の過度な緊張)
- 大腿四頭筋の痙縮:膝を曲げることが難しくなり脚を振り出す際に脚が「長い」状態のままとなるため、脚を横に振り出して代償する。
- 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)の痙縮:足がつま先立ち(尖足)になりやすく、脚をまっすぐ持ち上げるのが困難になる。
3. 関節の拘縮や可動域制限
- 麻痺側の股関節・膝関節・足関節の可動域が制限されていると、麻痺した脚を振り出す時に関節を曲げることが難しくなる。
4. 感覚障害
- 脚の位置や動きを正確に把握できず、動かし方が分かりにくくなる。
5. 運動制御や協調性の障害
- 脚の動きをコントロールしたり、脚にある筋肉どうしが協調的に働かないため、スムーズな脚の振り出しが難しくなる。
6. 転倒・つまずきに対する恐怖
- 足が地面に接触することや足を引きずることによる転倒を防ぐため、回避のための代償動作として脚を大きく外側に振り出す。
7. 適切に処方されていない装具の使用
- 短下肢装具(AFO)が適切に調整・処方されていない場合、足首や膝の自然な動きが制限され、分回し歩行パターンを引き起こすことがある。
このように分回し歩行は複数の要因が関与します。
当施設では、ご本人様の歩いている様子を見せていただき、その現象が起こっているメカニズムを分析し、さらにお身体の運動機能の状態を評価した上でリハビリを実施します。
分回し歩行に対するリハビリ:どうすれば改善する?
改善に向けた具体的なリハビリ方法をご紹介します。
- 1. 課題指向型歩行練習
- 立脚後期から遊脚期における蹴り出しの際の、股・膝・足関節の正しい動きを促し、正常な歩行パターンを反復して練習します。
鏡や動画等の視覚フィードバックを用いてフォームを修正します。
- 2. バランス機能練習
- 片足立ちや両下肢間の重心移動の練習により、ダイナミックなバランス機能の改善を図ることで、脚を外側に振り出す動作が解消されることがあります。
- 3. 神経筋再教育・筋力トレーニング
- 麻痺により分離運動 (例:脚を振り出す時に膝を曲げることが難しい)や関節運動が難しい (例:足首を上にあげることが難しい)場合、下肢の各関節運動を行います。
特に、股関節屈筋、膝関節屈筋(ハムストリングス)、足関節背屈筋の強化が分回し歩行の改善のために重要です。
- 4. ストレッチと可動域練習
- 大腿直筋の過活動を抑える、腓腹筋の痙縮を抑える、足関節背屈の可動域を維持・拡大することで脚が棒のようにつっぱり分回し歩行による代償を軽減する一助となりえます。
- 5. 装具の適応
- 短下肢装具 (AFO) を使用することで、脚の振り出し、脚を振り出している時に膝を曲げたり足首が下がらないよう動きが補助され、分回し歩行改善の一手段となります。
分回し歩行を変えるためには、個々の状態に応じた多角的なアプローチが必要です。
各介入を適切に組み合わせることで、より自然で効率的な歩行パターンの獲得が期待されます。
re-HAVEでは、各個人の課題やニーズ・目標に合わせたオーダーメイドのリハビリを完全マンツーマンで実施しています。
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