高齢者が歩くと疲れやすい理由とは?加齢による歩行効率の変化と対策|【健常高齢者編】疲れやすさと歩行効率シリーズ②
当施設『re-HAVE(リハブ)』は、京都・四条烏丸/下京区にある自費リハビリ施設として、脳卒中やパーキンソン病の方々へのリハビリを専門的に行っています。
「最近、以前より歩くとすぐ疲れる」
「長く歩けない」「つまずきやすい」
そんな声は、健常高齢者の方からもよく聞かれます。
病気がなくても、加齢とともに歩行効率(エネルギーコスト)が低下することが知られています。
今回は、科学的知見にもとづいて、なぜ高齢になると疲れやすくなるのか、そしてどう改善できるのかを理学療法士の視点で解説します。
加齢で歩行効率が低下する理由
年齢を重ねると、歩くときのエネルギー消費量が増え、同じ距離でも疲れやすくなることがわかっています。特に変化しやすいポイントは以下の3つです。
- ①歩幅が小さくなる
- 🍎 加齢に伴って股関節や足首の可動域が減少し、自然と歩幅が短くなります。
🍎 歩幅が短いと、同じ距離を歩くのに歩数が増えて疲労が蓄積しやすくなるため、効率が低下します。
- ②股関節の伸びが少なくなる(後ろに蹴り出せない)
🍎 健常高齢者の歩行では、
- 股関節伸展の不足
- 大殿筋(お尻の筋肉)・中殿筋の筋力低下
がよく見られます。
これにより、体が前に進む推進力が低下し、代わりに太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)に頼った「効率の低い歩き方」になりがちです。
- ③バランス調整のために余計な筋活動が増える
- 🍎 高齢になると体幹や股関節周囲の安定性が低下し、
🍎 歩行中に小さな揺れを補正するために常に余計な筋活動が必要になります。
これはエネルギー消費を増やす大きな原因です。
体力低下・筋力低下・関節可動域の変化が疲れやすさにつながる
🌸サルコペニア(筋量の自然減少)
60歳以降、下肢筋力は年1~2%のペースで低下します。
特に落ちやすいのは
- 股関節伸展筋(お尻の筋)
- 外転筋(横方向の安定性を担う筋)
これらは歩行の推進力と安定性に最も重要で、低下すると歩行が非効率になります。
🌸関節可動域の低下
- 足首の背屈
- 股関節の伸展
この2つは「歩幅」と「蹴り出し」に直結し、可動域が狭くなると疲れやすさにつながります。
🌸持久力の低下
心肺機能の衰えにより、同じ歩行でも息切れしやすく、疲労も蓄積しやすくなります。
転倒リスクと疲れやすさの関係
「疲れやすい歩き方」は、転倒リスクのサインでもあります。
- 🌸歩幅の減少 → つまずきやすさ増加
- 歩幅が小さく、すり足気味になると障害物につまずきやすくなります。
- 🌸バランス低下 → 体が揺れる → 余計な力を使う
- 揺れを抑えるために常に筋肉が働くため、疲労しやすくなり、結果としてバランスも不安定になります。
- 🌸疲労時は転倒しやすい
- ・疲れてくると歩幅がさらに小さくなる
・重心のコントロールが不安定になる
・足の上がりが低くなる
という研究結果が示されており、疲れやすさと転倒リスクには強い関連があります。
高齢者の歩行効率を改善するポイント
高齢者の歩行改善のカギは以下の点にあります。
🌻 股関節伸展筋(お尻の筋)を鍛える
歩行の推進力に重要なのは
🍏大殿筋(お尻)
🍏ハムストリングス(太もも裏)
これらが強くなると
- 歩幅が広がる
- 体が前に進みやすくなる
- 膝への負担が軽減する
- 疲れにくい歩き方に変わる
など歩行効率向上に貢献します。
🌻 歩幅改善
歩幅を適切に広げると歩行エネルギーコストが下がることが複数の研究で報告されています。
歩幅が広がることで、自然と効率的な歩行に近づきます。
🌻 バランストレーニング
- 片脚立ち
- ステップ反応
- 体幹の安定化
これらは転倒リスクの減少だけでなく、歩行そのものの安定性向上につながり、余計な筋活動が減る=疲れにくい歩行が実現します。
歩行効率と疲れにくさを高めるアプローチ
歩行の疲れやすさには、筋力だけでなく「歩き方のクセ」「関節の動き」「身体の使い方」など複数の要素が関わっています。
当施設では、お一人おひとりの状態を丁寧に評価しながら、
- 歩行のクセの詳細な分析
- 足の動きの改善
- 歩幅・重心移動・体の使い方の練習
- 個々の課題にあわせた重点的なプログラム
といったアプローチを行っています。
こうした継続的で丁寧なアプローチにより、「疲れにくく、歩きやすい身体」へと変化していくことが期待できます。
まとめ
健常高齢者でも、
- 歩幅の減少
- 股関節伸展不足
- バランス低下
- 筋力・可動域の低下
- 疲労 → 転倒リスク増加
などが組み合わさり、歩行効率は徐々に低下します。
しかし、適切なリハビリを行うことで歩行効率を取り戻すことは十分可能です。
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次回は、脳卒中編・パーキンソン病編へと続き、疾患ごとの「疲れやすさと歩行効率の変化」について解説します。
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