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【痛みシリーズ③】整形外科疾患における痛みの正体とリハビリの役割|慢性痛と上手につき合うために

【痛みシリーズ③】整形外科疾患における痛みの正体とリハビリの役割|慢性痛と上手につき合うために

京都・四条烏丸にある当施設「re-HAVE(リハブ)」では、脳卒中やパーキンソン病だけでなく、腰痛・膝痛・肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)などの整形外科疾患に対するリハビリも行っています。

「長年の腰痛が治らない」
「膝の痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返す」
「整形外科では“骨には異常がない”と言われたのに痛みが続く」

──そのような“慢性痛”に悩む方が年々増えています。


今回は【痛みシリーズ】第3回として、整形外科疾患における「痛みの正体」と「リハビリの役割」について解説します。

炎症や損傷部位が治っても痛みが残る理由:その背景にあるメカニズム

  • 整形外科疾患の痛みというと、「炎症があるから」「関節や筋肉が傷んでいるから」と考えがちです。
  • しかし実際には、炎症や組織の損傷そのものが治っても痛みが続くことがあります。
  • これは、痛みが単なる“損傷のサイン”ではなく、神経や脳の働きによって調整されているからです。
  • 痛みは、末梢(筋・関節・神経)からの信号を脳が受け取り、「どのくらい危険か」「どれほど不快か」を評価して感じる“主観的な体験”です。
  • したがって、同じ刺激でも脳の状態(ストレス・疲労・不安など)によって痛みの強さが変わるのです。

痛みの分類と慢性化の流れ

痛みには、大きく分けて以下の3種類があります。

痛みの種類主な原因特徴進行の流れ
侵害受容性疼痛
(nociceptive pain)
炎症や組織損傷ケガ・手術・関節炎などで起こる「組織由来の痛み」。急性期に多くみられる。痛みの始まり:組織損傷による炎症反応
神経障害性疼痛
(neuropathic pain)
神経そのものの損傷しびれや焼けるような痛み、電気が走るような痛み。ヘルニアや手術後の神経損傷などで発生。神経障害によって痛みが持続・慢性化
中枢機能性疼痛
(nociplastic pain)
中枢神経系(脳・脊髄)の過敏化明確な損傷がないのに痛みが続くタイプ。慢性腰痛・線維筋痛症など。中枢性感作(central sensitisation)により、「脳が痛みを記憶」して持続


整形外科疾患の痛みは、はじめは侵害受容性疼痛(炎症・組織損傷)として発症します。

しかし、長期化すると中枢性感作が起こり、実際の損傷が治っても痛みが続く中枢機能性疼痛へと移行します。

この移行を見極めることが、慢性痛リハビリの最も重要なポイントです。

慢性痛を悪化させる要因

慢性痛では、以下のような複数の要因が関与します。

  • 姿勢の崩れや体の使い方の偏り
  • 運動不足による筋のこわばり・血流低下
  • 「動くと痛い」と思い込む恐怖
  • 不安・抑うつなどの心理的ストレス
  • 睡眠リズムや生活習慣の乱れ

これらが重なることで、脳の痛みネットワークが過敏になり、痛みが長引く“中枢性感作”の状態に陥ります。

リハビリで行う主なアプローチ

慢性痛リハビリの目的は、単に「痛みを取る」ことではなく、痛みの感じ方と身体の使い方を整えることにあります。

1. 姿勢・動作の再教育:痛みを生む“使い方のくせ”を整える
■ 目的: 身体への負担を減らし、効率よく動けるパターンを再構築する。

■ 主な方法:
◎ 姿勢分析・動作解析で、痛みを引き起こすクセを特定
◎ 体幹を中心とした安定化トレーニング
◎ 関節可動域の改善・運動連鎖の再構築

■ ポイント:
痛みは習慣化した“動き方”によって悪化することが多く、動作の質を整えるだけで大きく改善するケースも多い。


2. 筋・神経のバランス調整:過剰な緊張をほぐし動かしやすくする
■ 目的: 過剰な緊張を緩め、筋・神経の協調性を取り戻す。

■ 主な方法:
◎ ストレッチ / 徒手療法で筋緊張を緩和
◎ 温熱・電気刺激(TENS・EMS)で血流と神経伝達を改善
◎ 固有感覚刺激で筋の出力バランスを調整

■ ポイント:
「筋肉が硬い ⇒ 関節の動きが悪い ⇒ 動作が乱れる ⇒ 痛み増強」という連鎖を断ち切ることが目的。


3. 中枢性機能性疼痛へのアプローチ:痛みの“感じ方”を再教育する
■ 目的: 中枢性感作による痛みの過敏を落ち着かせ、脳の処理を整える。

■ 主な方法:
◎ ミラーセラピー・イメージトレーニング
◎ 注意転換・呼吸法・リラクゼーション
◎ 有酸素運動で脳内の痛み抑制系(下行性抑制)を活性化

■ ポイント:
「脳が痛みを強く感じてしまう」状態を正常化し、痛み=危険ではないと脳に再学習させるプロセス。


4. 心理的サポート:痛みへの不安を取り除き、安心して動けるようにする
■ 目的: 痛みに対する恐怖・不安を減らし、“動く自信”を回復する。

■ 主な方法:
◎ 「痛み=組織損傷とは限らない」ことをわかりやすく説明
◎ 痛みが慢性化するメカニズムを理解してもらう
◎ 認知行動的アプローチで動作回避を改善

■ ポイント:
「動くと悪化するかも…」という恐怖は、
慢性痛を長引かせる最も大きな要因のひとつです。
知識と安心感が、“動ける体”への第一歩。

痛みの悪循環を断ち切る

痛み → 動かさない → 筋緊張・姿勢悪化 → 痛みの増強

この悪循環を断ち切るために、“少しずつでも動く”ことが治療そのものになります。

「動くと痛い」ではなく、「動かすほど痛みが減る」状態へと導くのがリハビリの目的です。

まとめ:慢性痛を「コントロールできる痛み」へ

整形外科疾患の痛みは、身体の問題から脳の反応まで、複数の要素が関わっています。

リハビリでは、体と脳の両面を整え、“痛みをコントロールできる身体”を目指します。

「痛みがあるから動けない」ではなく、

「動くことで痛みと上手に付き合える」へ。

痛みが長引くと感じたら、我慢せず、ぜひ一度 re-HAVE(リハブ)にご相談ください。


お問い合わせ・体験リハビリ

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