【痛みシリーズ①】脳卒中後の痛み(片麻痺の疼痛)とは?原因・種類・リハビリでの改善方法を理学療法士が解説
脳卒中後の片麻痺で肩や腕の痛みに悩む方へ。京都・四条烏丸/下京区にある自費リハビリ施設「re-HAVE(リハブ)」では、脳卒中(脳梗塞・脳出血)やパーキンソン病など、神経系疾患に特化した専門的なリハビリを提供しています。
- 脳卒中後のリハビリで多くの方が悩まされる症状の一つに「痛み」があります。
- ──「肩が痛くて腕が上がらない」
──「肩や手を動かしたいけど痛みで動かせない」
こうした訴えは非常に多く、脳卒中後の方の約半数が何らかの痛みを感じるといわれています。
今回のコラムでは【痛みシリーズ】の第1回として、脳卒中後の片麻痺に伴う痛みをテーマにお伝えします。
脳卒中後に起こる痛みの種類
脳卒中後の痛みには、原因や発生部位によっていくつかのタイプがあります。
それぞれの特徴を知ることが、適切な対処の第一歩です。
- 1. 中枢性神経障害性疼痛(脳の障害による痛み)
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- 脳卒中によって脳内の痛みを感じる神経回路や部位(視床、脳幹、内包後脚など)が損傷すると、実際に体に明らかな損傷がなくても痛みを感じる状態になります。
- ピリピリ、灼熱感、ズキズキとした持続痛などが特徴です。
- 軽い触覚刺激でも強い痛みを感じることがあります。
- つまり、体には問題がなくても、脳が痛みを「発信してしまう」のです。
▼補足:中枢性神経障害性疼痛と末梢性神経障害性疼痛の違い
痛みの原因が“脳・脊髄”にあるか“手足の神経”にあるかの違いです。
| 種類 | 損傷部位 | 主な原因 | 症状の特徴 |
| 中枢性神経障害性疼痛 | 脳・脊髄 | 脳卒中、脊髄損傷など | 感覚異常・灼熱感・アロディニア |
| 末梢性神経障害性疼痛 | 末梢神経 | 糖尿病、神経圧迫、外傷など | しびれ・痛み・感覚鈍麻 |
- 2. 肩手症候群(反射性交感神経性ジストロフィー)
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- 一般的には脳卒中発症の急性期〜亜急性期(発症後1〜3か月)に多くみられます。
- 脳卒中後の麻痺側の肩や手に、腫れや熱感、強い痛みが出る状態です。
- 肩関節を中心に可動域が制限され、手がむくみやすくなるケースも多いです。
- 脳卒中後早期にみられやすく、適切なポジショニングと運動が重要です。
- 3. 筋骨格性疼痛:関節拘縮・筋緊張 (痙縮) による痛み
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- 関節拘縮による痛み:長期間動かさないことで、関節・筋肉・靭帯が固まってしまいます。この状態から動かそうとすると痛みが出ます。
- 痙縮による痛み:脳卒中後は筋緊張(痙縮)が高まることで、関節や筋肉に過剰なストレスがかかることで痛みが発生します。
- 姿勢や代償動作による痛み:麻痺側をかばって生活するうちに、麻痺側と反対側の手足・体幹への負担が増え疼痛が生じることがあります。
痛みを放置するとどうなる?悪循環のリスク
痛みを我慢して動かさないでいると、筋肉や関節はさらに硬くなり、痛みが強くなる「悪循環」に陥ります。
痛み → 動かさない → 関節拘縮・筋緊張増加 → さらに痛い
この悪循環を断ち切るには、早期にリハビリを行うことが何よりも大切です。
痛みの評価とリハビリアプローチ
痛みの部位・強さ・特徴を丁寧に確認し、原因を見極めます。
そのうえで、以下のようなリハビリを行います。
- 1. 中枢性神経障害性疼痛に対するリハビリ
- 脳内の感覚神経回路の損傷によって起こるため、体への直接的な刺激だけでなく、脳の再学習を促すアプローチが重要です。
── 鏡療法・イメージトレーニング:視覚・運動イメージを活用し、脳が「正しい感覚情報」を再び認識できるように促す。
── 電気刺激(FES・TENS):感覚入力を補助し、痛みの抑制や運動機能改善をサポート。
- 2. 肩手症候群(反射性交感神経性ジストロフィー)に対するリハビリ
- 末梢神経や交感神経の異常、炎症反応によって起こるため、早期介入と炎症・腫脹管理が鍵となります。
── ポジショニング:肩や手に過度な牽引や圧がかからない姿勢を保つ。
── 関節可動域訓練:痛みのない範囲で関節を動かし、拘縮と循環障害を防ぐ。
── 温熱・軽度運動:血流を促進し、交感神経の緊張を緩和。
- 3. 筋骨格性疼痛(拘縮・筋緊張・痙縮)に対するリハビリ
- 筋肉や関節への物理的な負荷が原因であるため、姿勢調整と筋緊張のコントロールを中心に行います。
── 筋緊張を整える運動療法:肩甲帯・体幹の安定を促し、麻痺側の痙縮を軽減。
── ストレッチ:関節周囲の軟部組織の柔軟性を回復し、動作時の痛みを予防。
── 姿勢修正・動作指導:代償動作を減らし、健側への負担を軽減。
まとめ:痛みを我慢せず、専門家に相談を
脳卒中後の痛みは、「仕方がないもの」ではありません。
原因を見極め、適切にリハビリを行うことで、痛みの軽減や動作の改善が期待できます。
「痛みがあるからリハビリができない」ではなく、
「リハビリで痛みを減らしていく」──その意識の転換が回復の第一歩です。
つらい痛みでお困りの方は、ぜひ一度当施設にご相談ください。
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