脳卒中後の痙縮パターン解説②|上肢 (腕・手指) にみられる典型的な屈曲パターンとは?

京都・四条烏丸にある脳梗塞・脳出血後のリハビリに特化した、自費リハビリ施設「re-HAVE(リハブ)」の理学療法士 木村です。
- このコラムでは、
- 「手が握ったままで、開けない。痛みを感じることもある。」
「お箸もスプーンも持てない。いい方の手ばっかり使って疲れる。」
「ズボンの上げ下げに時間がかかる。」
といった上肢 (腕や手指) に痙縮により、日常生活でお困りの方に向けて、上肢の痙縮パターンについてわかりやすく解説します。
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※本記事はシリーズ第2弾です。下肢 (足)の痙縮については、以下リンク先よりぜひご覧ください。
コラム「脳卒中後の痙縮パターン解説①|下肢 (足) にみられる典型的な伸展パターンとは?」
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痙縮とは?
脳卒中などによる上位運動ニューロンの障害で起こる、筋肉の異常な緊張状態 (筋緊張の亢進)です。
特徴としては、動かそうとすると筋肉が反射的に強く抵抗し、関節が曲がりにくくなる、速度依存性の筋緊張の亢進があります。
シナジー (共同運動パターン) とは?
複数の筋肉が協調して働く「共同運動パターン」のことです。
脳卒中後には、筋肉を選択的に動かす制御が難しくなり、特定の筋群が同時に働く固定的なパターン (異常シナジー) が現れます。
- 上肢では「屈曲パターン」
- 下肢では「伸展パターン」
が異常な共同運動パターン (シナジー) として観察されます。
痙縮がもたらす典型的な運動パターンの変化:上肢の「屈曲パターン」とは?
脳卒中後の片麻痺の上肢では、主に共同運動 (シナジー)の「屈曲パターン」と呼ばれる現象が優位に現れます。これは、腕全体が特定のパターンで動く傾向となります。
これは次のような筋活動によって構成されます。
関節の運動方向 | 主に痙縮が起こる筋肉 | 症状の特徴 |
手関節掌屈・手指屈曲 | 長掌筋、浅・深指屈筋群 | 手が握りこぶしのように固まり、開きにくくなる |
前腕回内 | 円回内筋、方形回内筋 | 手のひらが下を向きやすい |
肘関節屈曲 | 上腕二頭筋、腕橈骨筋 | 肘が曲がったまま固まり、伸ばすのが難しくなる |
肩関節内転・内旋 | 大胸筋、広背筋、三角筋前部など | 腕が胸の前に引き寄せられ、肩が内側に巻き込まれる |
痙縮による上肢屈曲パターンが日常生活に与える影響
上肢の屈曲パターンは、見た目だけでなく日常生活動作 (ADL) にも大きな影響を与えます。
- 食事動作の困難
- 箸やスプーンを持てない、これらを持とうとすると肘が勝手に曲がり、手が口元まで届かない。
- 更衣動作の制限
- 袖に腕を通そうとすると肘や手指の痙縮で動かしにくく、衣服を着替えるのに時間がかかる。
- 痛み・二次的変形のリスク
- 肩関節の拘縮、肘の屈曲拘縮、手指変形の進行
- その他の問題
- 手のひらが開かず不衛生、腕の見た目が気になる
上肢の痙縮に対するリハビリ
痙縮の軽減と、機能的な腕や手指の動きを取り戻すために、主に以下のようなリハビリアプローチが効果的です。
1. 関節可動域練習・ストレッチ
肘や手首、指を他動的・持続的に伸ばすことで、痙縮や拘縮の予防につながります
2. 選択的運動 (分離運動 ) の練習
肘を曲げずに肩を上げるなど、1つの関節を意識的に動かす練習を繰り返すことで、異常シナジーからの脱却を目指します
3. 機能的電気刺激 (FES) による促通
電気刺激を用いて手指の伸展やリリース動作をサポートし、正しい運動パターンを再学習を行います。
※当施設では、手指の伸展や腕の運動をサポートするために、電気刺激装置「WILMO」を活用しています。詳しくはこちら↗をご覧ください。
4. 課題指向型練習
「物をつかむ」など日常生活に近い動作を練習し、実用的な手の使い方を目指します。
脳卒中後の上肢の痙縮では、肩・肘・手が強く曲がる「屈曲パターン」がよくみられます。
特に手の細かい動きが難しくなることで、日常生活に大きな影響を与えます。
当施設「re-HAVE (リハブ)」では、脳梗塞・脳出血後の痙縮による上肢のつっぱりや動かしにくさでお悩みの方に、マンツーマンで丁寧にリハビリを実施しています。
「手を伸ばせるようになりたい」「自分の手でまた食事をしたい」そんな想いを持つ方に、最適なリハビリを提案します。どうぞお気軽にご相談ください。
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