脳卒中後の脳の “再学習” について ―神経可塑性 (かそせい) とは?―

こんにちわ。京都・四条烏丸で、脳卒中後片麻痺のリハビリに特化した自費リハビリ施設「re-HAVE (リハブ)」、理学療法士の木村です。
- 今回は、神経可塑性と言われ「脳が経験によって変化する力」についてお話します。
以下のようなお悩みを抱えておられる方に特にご一読いただけたらと思います。 - 「脳卒中から何年も経っていても、まだリハビリの効果に期待できる?」
「年を取っていると、変われないのでは?」
「リハビリの方法で脳の学習は変わる?」
脳の神経可塑性とは?
脳が経験・学習・環境・損傷などに応じて、構造や機能を変化・適応させる能力のことです。
この神経可塑性は、新たな動きを学ぶときだけでなく、脳損傷によって失われた機能を回復する上でも主な役割を果たします。
神経可塑性は、以下のようなメカニズムや現象を包括する一般的な用語です:
・習慣化(habituation)
・経験依存性可塑性(experience-dependent plasticity)
・損傷後の細胞レベルでの回復
この中でも特にリハビリや運動学習において重要な「経験依存性神経可塑性」について説明します。
経験依存性神経可塑性とは?
経験依存性神経可塑性は、各個人が体験した感覚・経験や学習に応じて脳の神経回路の構造や機能が変化・再編成される仕組みです。
この可塑性は学習や記憶、損傷からの回復に不可欠であり、脳が環境に適応し続けるための基本的なメカニズムとなっています。
KleimとJonesによる論文 (2008) では「経験依存性神経可塑性の10の原理」が提唱されました。
この原理は、脳が経験や練習に応じてどのように変化するかを説明したものです。
- 1. 使わなければ失う(Use It or Lose It)
- 使われない神経回路は時間とともに弱くなったり失われたりします。
- 2. 使えば改善する(Use It and Improve It)
- 特定の活動を繰り返し行うことで、神経回路の構造と機能が強化・向上します。
- 4. 繰り返し(Repetition Matters)
- 神経可塑性は反復練習によって促進されます。継続的かつ頻度の高い運動が重要です。
- 5. 強度(Intensity Matters)
- 脳の変化にはリハビリの強度が必要です。効果的な回復には、負荷の高い持続的なリハビリが求められます。
- 6. タイミング(Time Matters)
- リハビリや回復の過程では、初期の段階では一時的な変化が中心で、後期になるとより安定した長期的な変化が起こります。
- 7. 顕著性(Salience Matters)
- 個人にとって意味があり関心の高い刺激や活動ほど、脳の可塑性を促進します。
- 8. 年齢と可塑性(Age and Plasticity)
- 脳の再編成能力は年齢によって影響を受けます。若年者の方が回復効率は高いですが、神経可塑性は生涯を通じて回復に影響します。
- 9. 転移効果(Transference)
- あるリハビリで経験し学習したことが、他の類似した動作の回復を助けることがあります。たとえば、手の筋力や器用さの向上が料理、書字、手芸などの細かい動作の回復につながります。
- 10. 干渉(Interference)
- 新しく学んだことや行動が回復を助けるどころか反対に邪魔してしまう現象です。例えば、麻痺側の手を使わずに反対側の手ばかり使うと麻痺側の回復が遅れることがあります。
以上から、脳の神経回路は身体の活動により使われることで強化され、使われなければ弱くなります。
学習や改善を促すためには、目的に特化した反復的かつ強度の高い練習を、適切なタイミングと意味のある活動で行うことが重要です。
リハビリへの応用
上記の「経験依存性神経可塑性の10の原理」について、脳卒中後片麻痺の方のリハビリ場面での具体的な応用例をあげます。
- コップを持つ・置くといったタスクを毎日何度も繰り返すことで神経回路が強化される。
→「反復」・「干渉」などの原理 - 歩行訓練を繰り返すことで、歩行パターンやバランスが改善する。
→「使えば改善する」「反復性」「特異性」の原理 - トイレ動作の練習はご自宅のトイレ環境またはそれに類似した環境で行う。
→「特異性」「顕著性」の原理 - 短時間でも高強度で集中して行うリハビリ(例:高強度インターバルトレーニング、電気刺激によるパワーアシスト付きでの運動)により、可塑性をより強く促進。
→「強度」の原理
★当施設では電気刺激装置「WILMO(ウィルモ)」をご利用いただけます。詳しくは以下のリンクを訪れてご覧ください。
https://re-have.jp/post-643/
https://re-have.jp/blog-detail/post-749/ - 個人の趣味や日常生活に関係する活動 (料理、字を書く、園芸など) をリハビリに取り入れることで、動機づけと神経反応を高める。
→「顕著性」の原理 - 立ち上がり動作を繰り返し訓練することで、自然と歩行時の筋活動にも好影響を及ぼす。また、バランス訓練が歩行能力にも好影響を与えることもある。
→「転移効果」の原理
リハビリによる運動の可能性
神経可塑性は、リハビリが脳の再学習に影響を与え、運動機能や動作の改善を促進することを示しています。
これらの原理を活用することでより効果的なリハビリの結果が期待できます。
re-HAVEでは、各個人の状態やニーズ・目標に合わせたオーダーメイドのリハビリを完全マンツーマンで実施しています。
まずはお困りのことについてお気軽にご相談、お問い合わせ下さい。
※施設の見学・無料カウンセリング・リハビリ体験も随時受付中です。