1.関節症におけるリハビリ
関節症のリハビリテーションは、痛みや炎症を抑えながら、関節の機能を改善し、日常生活動作を円滑に行えるようにすることを目的として行います。
1-1.一般的な関節症のリハビリ
運動療法
- 関節可動域訓練
- 関節の柔軟性を高め、動きの範囲を広げる運動です。
- 筋力強化訓練
- 関節を支える筋肉を鍛え、関節の安定性を高める運動です。
- 持久力向上訓練
- ウォーキングや水中運動など、無理なく続けられる運動で心肺機能を高め、体力の維持・向上を図ります。
物理療法
- 温熱療法
- 温熱効果で血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
- 電気療法
- 電気を用いて、筋肉を刺激し、痛みを軽減したり、筋力を強化したりします。
1-2.当施設における関節症のリハビリ
re-HAVEでは、利用者様一人ひとりの症状や身体状況、生活背景に合わせて、絶対的な時間と質を担保した適切なリハビリプログラムを作成し、提供しています。
運動療法
マンツーマンで、疼痛軽減、関節可動域改善、ストレッチ、筋力強化、動作改善、日常生活動作練習など、利用者に適切な運動プログラムを実施します。理学療法士が丁寧に指導し、利用者様のペースに合わせて運動を進めていきますので、運動が苦手な方でも安心してリハビリに取り組めます。
ご自宅での運動指導
日常生活での注意点や、自宅でできる運動の指導なども行い、利用者様が自立した生活を送れるようにサポートしています。
関節症は、進行性の病気ではありますが、適切な治療や継続的なリハビリを行うことで、症状の進行を抑制し、日常生活の質を維持・向上させることが可能です。
ご検討中の方へ
関節症は、リハビリを継続することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持することができます。関節の痛みや動かしにくさを感じたら、我慢せずに早めにご相談ください。
2.関節症とは
関節症(変形性関節症)とは、関節を覆う軟骨がすり減ったり、変形したりすることで、痛みや腫れ、動かしにくさといった症状が現れる病気です。関節の中でも特に、体重を支える膝関節や、よく使う指の関節、股関節などに多くみられます。
変形性関節症は、大きく分けて以下の2つのタイプに分類されます。
2-1.一次性変形性関節症
明らかな原因がないまま、加齢による軟骨の老化や軽度の遺伝、肥満、関節の酷使などが複雑に関係して発症するものを一次性変形性関節症と呼びます。
- 加齢
- 年齢を重ねるにつれて、軟骨を構成する成分が変化し、水分が失われて弾力性が低下します。
- 遺伝
- ご家族に変形性関節症の方がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。軟骨の代謝に関わる遺伝子の変異などが関係していると考えられています。
- 肥満
- 体重が増加すると、関節にかかる負担が大きくなり、軟骨がすり減りやすくなります。特に膝関節は体重の影響を受けやすく、肥満は変形性膝関節症の大きなリスク要因となります。
- 関節の酷使
- 立ち仕事や重いものを持ち上げる作業など、特定の関節に負担をかける動作を長年続けることで、軟骨が損傷しやすくなります。
一次性変形性関節症は、加齢に伴い発症率が高くなることから、中高年の方に多く見られます。
2-2.二次性変形性関節症
ケガや骨折、関節リウマチ、先天性股関節脱臼などの病気が原因で軟骨が損傷し、発症するものを二次性変形性関節症と呼びます。
- ケガ
- スポーツによる靭帯損傷や骨折、日常生活での転倒など、関節に強い衝撃が加わることで軟骨が損傷し、変形性関節症を発症することがあります。
- 骨折
- 関節面の骨折は、軟骨や骨に大きなダメージを与え、変形性関節症のリスクを高めます。
- 関節リウマチ
- 免疫異常により関節に炎症が起こる病気で、炎症が長期間続くことで軟骨や骨が破壊され、変形性関節症を引き起こすことがあります。
- 先天性股関節脱臼
- 生まれつき股関節が脱臼している状態であり、放置すると股関節の変形が進み、将来的に変形性股関節症を発症するリスクが高まります。
二次性変形性関節症は、若い世代でも発症する可能性があります。
3.関節症の原因
関節症は、以下のような要因によって引き起こされると考えられています。
- 加齢
- 年を重ねることで軟骨の弾力性が失われ、すり減りやすくなる
- 遺伝
- 家族に関節症の方がいる場合、発症リスクが高まる
- 肥満
- 関節にかかる負担が大きくなり、軟骨が損傷しやすくなる
- 過度な運動
- 関節に負担をかける激しい運動を続けることで、軟骨がすり減りやすくなる
- 関節の酷使
- 同じ動作を繰り返す作業や姿勢によって、特定の関節に負担がかかり続ける
- ケガ
- 関節を骨折したり、靭帯を損傷したりすることで、軟骨が傷つきやすくなる
4.関節症の症状
関節症の症状は、軟骨のすり減りや関節の変形の程度、炎症の有無などによって個人差があります。初期には自覚症状がほとんどない場合もありますが、徐々に進行し、以下のような症状が現れるようになります。
4-1.痛み
- 運動時痛
- 動かすと痛む、特に動き始めや階段の上り下り、立ち上がり時に強い痛みを感じます。
- 安静時痛
- 安静にしていても痛む、夜間や朝方に痛みが強くなることがあります。
- 圧痛
- 関節を押すと痛む。
4-2.腫れ
関節に炎症が起こり、腫れや熱感を伴うことがあります。特に、関節を酷使した後や、朝起きた時に腫れが強くなることがあります。
4-3.動かしにくさ
関節がスムーズに動かせなくなり、曲げ伸ばしや回旋運動が制限されます。朝のこわばりも特徴的で、起床後しばらく関節が硬く、動かしにくいと感じます。
4-4.関節の変形
関節の変形は、進行すると目に見えるようになります。
- O脚/X脚
- 膝関節の変形により、脚全体の形が変わってしまいます。
- 関節の肥大
- 関節周辺の骨が隆起したり、関節液が溜まって腫れ上がったりします。
- クリック音
- 関節を動かした時に、音が鳴ることがあります。
これらの症状は、無理をしたり、天候が悪化したりすることで悪化する傾向があります。 また、症状が進行すると、日常生活に支障をきたすようになり、歩行困難や衣服の着脱困難、睡眠障害などを引き起こすこともあります。
5.関節症の検査方法
関節症の診断には、医師による診察と、画像検査などが行われます。
5-1.X線検査(レントゲン検査)
関節症の診断に最も多く用いられる検査です。
- 骨の状態
- 関節を構成する骨の形や、関節の隙間(関節裂隙)の狭小化を確認します。
- 骨棘の形成
- 骨棘とは、骨の変形で、関節の端にトゲのように尖った骨が形成されることです。
- 軟骨のすり減り
- レントゲン写真では軟骨自体は写りませんが、関節裂隙が狭くなっていることから、間接的に軟骨のすり減り具合を推測できます。
レントゲン検査は、短時間で痛みもなく検査を受けることができます。
5-2.MRI検査
X線検査よりも詳細に、関節の状態を把握できる検査です。
- 軟骨の状態
- 軟骨の損傷の程度や、炎症の有無などを詳しく調べることができます。
- 靭帯や腱の状態
- 関節を支える靭帯や腱の損傷の有無も確認できます。
- 滑膜の状態
- 関節包の内側にある滑膜と呼ばれる組織の炎症の有無を確認できます。
MRI検査は、レントゲン検査ではわからない、軟骨や靭帯、腱などの軟部組織の状態を詳しく調べることができ、より正確な診断に役立ちます。
5-3.診察
医師は、問診や身体診察を通して、患者さんの症状や生活習慣、過去の病歴などを詳しく確認します。
問診
- いつから、どのような症状があるのか?
- 痛みはどの程度か?
- どのような時に痛みが強くなるのか?
- 過去のケガや病気の経験はあるか?
視診・触診
- 関節の腫れや変形
- 関節の動きの範囲
- 関節の痛みや違和感
これらの情報と、画像検査の結果を総合的に判断し、関節症の診断を行います。
6.関節症の治療方法
関節症の治療は、残念ながら現在の医療では、すり減ったり変形したりした軟骨を完全に元通りにすることはできません。そのため、治療の目的は以下に重点が置かれます。
- 痛みや炎症を抑える
- 関節の機能を維持・改善する
- 日常生活の質を向上させる
治療法は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
6-1.保存療法
手術を行わずに、薬物療法やリハビリテーション、生活習慣の改善などによって症状の改善を図る治療法です。多くの場合、まずは保存療法が行われます。
薬物療法
- 鎮痛剤
- 痛みを抑えます。
- 消炎鎮痛剤
- 痛みと炎症を抑えます。
- ヒアルロン酸注射
- 関節内のヒアルロン酸を増やし、関節の動きを滑らかにします。
- リハビリテーション
- 関節の動きを改善し、筋力を強化することで、痛みを軽減し、関節の機能を維持します。
日常生活指導
- 体重コントロール
- 肥満は関節への負担を増加させるため、減量指導が行われます。
- 運動指導
- 関節に負担の少ない運動方法を指導します。
- 装具療法
- 関節をサポートする装具(サポーターや杖など)を使用することで、関節への負担を軽減します。
6-2.手術療法
保存療法で効果が得られない場合や、関節の変形が進行している場合に検討されます。
関節鏡手術
関節内に小さなカメラを入れて、関節内の状態を観察しながら、損傷した軟骨や骨の一部を取り除いたり、修復したりする手術です。
人工関節置換術
損傷が激しい関節を、人工関節に置き換える手術です。
6-3.その他の治療法
温泉療法
温泉の温熱効果や薬効成分によって、痛みや炎症を和らげます。
鍼灸治療
鍼やお灸を用いて、血行を促進し、痛みを軽減します。
執筆者

セラピストリーダー/理学療法士
2003年 理学療法士免許を取得。急性期・回復期・維持期病院、および生活期におけるリハビリテーションの臨床現場で理学療法士として勤務。さらに、未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センターや国際協力機構での職務を経験。
2025年 プライベートSTROKEリハビリスタジオ re-HAVE セラピストリーダーに就任。
これまで、脳血管・運動器疾患を中心に幅広いリハビリテーションの臨床場面に従事。修士・博士課程や研究センターでは、脳卒中後片麻痺者の歩行動作やバランス能力、上肢の運動機能に関する研究に取り組む。