1. 骨折におけるリハビリテーション
骨折後のリハビリテーションは、骨折の治癒段階や患部の状態、患者様の年齢や体力などに合わせて、段階的に進めていきます。
1-1. 一般的な骨折のリハビリ
関節可動域訓練
骨折によって硬くなってしまった関節を、無理のない範囲で動かしていくことで、関節の柔軟性を取り戻し、可動域を広げていきます。
筋力トレーニング
骨折によって衰えてしまった筋肉を、段階的に鍛えていくことで、筋力を取り戻し、関節を安定させます。
歩行訓練
足の骨折などで歩行が困難になった場合、杖歩行や歩行器を使用しながら、徐々に体重をかけていく練習を行い、最終的には独歩を目指します。
物理療法
温熱療法、電気療法、水治療法などを行い、痛みや腫れを軽減し、組織の修復を促進します。
1-2. 当施設における骨折のリハビリ
re-HAVEでは、利用者様一人ひとりの症状や身体状況、生活背景に合わせて、絶対的な時間と質を担保した最適なリハビリプログラムを作成し、提供しています。
長期間経過後のリハビリ
骨折後、長期間経過した場合でもリハビリを再開することで、関節拘縮を和らげながら、筋力向上をさせることで、痛みを緩和しご負担のない日常生活を取り戻すことができます。
痛みに配慮したプログラム
利用者様の痛みの程度に配慮しながら、無理なく進められるプログラムを提供いたします。
日常生活動作の練習
階段昇降やトイレ動作、着替え、入浴など、日常生活で必要な動作を練習し、自立した生活を送れるよう支援します。
自宅でのリハビリ指導
自宅でも継続してリハビリを行えるよう、セルフエクササイズやストレッチなどの指導も行います。
ご検討中の方へ
骨折からの回復には個人差があり、焦らずに計画的にリハビリを進めていくことが大切で、日常生活の質を維持・向上させることができます。
当施設では、利用者様が一日も早く日常生活に戻れるよう、全力でサポートいたします。 お気軽にご相談ください。
2.骨折とは
骨折は、骨にかかる力が骨の強度を超えた時に発生します。 転倒、交通事故、スポーツ中の事故など、様々な原因によって起こりますが、骨粗鬆症など、骨がもろくなっている場合は、軽度の衝撃でも骨折してしまうことがあります。
骨折の種類
骨折には、様々な種類があり、骨折の状態や部位によって分類されます。
発生機序による分類
- 外傷性骨折
- 転倒や打撲など、外部からの強い力によって発生する骨折。
- 疲労骨折
- 同じ部位に繰り返し負荷がかかることで発生する骨折。
- 病的骨折
- 骨腫瘍や骨粗鬆症など、骨がもろくなっている病気がある場合に、軽度の衝撃で発生する骨折。
骨折線の状態による分類
- 完全骨折
- 骨が完全に断裂している状態。
- 不完全骨折
- 骨の一部が断裂しているが、完全に分離していない状態。こどもの骨折に多い。
皮膚損傷の有無による分類
- 開放骨折
- 骨折部位の皮膚に傷があり、骨が外部に露出している状態。感染症のリスクが高いため、緊急の治療が必要です。
- 閉鎖骨折
- 骨折部位の皮膚に傷がなく、骨が外部に露出していない状態。
3.骨折の原因
骨折は、骨の強度を超える外力が加わることで発生しますが、その原因は大きく分けて「外傷」と「病気」の2つに分けられます。
3-1. 外傷の場合
- 転倒・落下
- 日常生活で最も多い骨折の原因です。階段からの転落、つまずいて転倒、ベッドや椅子からの落下など、様々な場面で起こりえます。特に、高齢者は骨粗鬆症によって骨がもろくなっている場合が多く、わずかな段差や衝撃でも骨折しやすいため注意が必要です。
- 交通事故
- 自動車、バイク、自転車などの事故では、大きな衝撃が身体に加わるため、重度の骨折に繋がる危険性があります。
- スポーツ
- コンタクトスポーツや激しい運動を伴うスポーツでは、衝突や転倒によって骨折が起こることがあります。特に、バスケットボール、サッカー、ラグビー、スキー、スノーボードなどで骨折が多く見られます。
- 労働災害
- 高所からの落下、重い物の落下、機械に巻き込まれるなど、仕事中の事故で骨折をすることがあります。
- 暴力・虐待
- 殴打や蹴るなどの暴力によって骨折が起こることがあります。乳幼児や子どもに見られる不自然な骨折は、虐待の可能性もあるため、注意が必要です。
3-2. 病気の場合
- 骨粗鬆症
- 骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気です。高齢者に多くみられますが、閉経後の女性、やせている人、カルシウムやビタミンD不足の人などもなりやすい病気です。骨粗鬆症が進行すると、わずかな衝撃でも骨折してしまうことがあります。
- 骨腫瘍
- 骨にできる腫瘍が原因で、骨が脆くなり、骨折しやすくなることがあります。
- 骨髄炎
- 骨に細菌が感染し、炎症を起こす病気です。骨髄炎が起こると、骨がもろくなり、骨折しやすくなることがあります。
- 遺伝性疾患
- 骨形成不全症など、遺伝的に骨が弱くなる病気があります。
このように、骨折の原因はさまざまであり、年齢や生活習慣、健康状態によってリスク因子も異なります。 健康な骨を維持するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、カルシウムやビタミンDを十分に摂取することが大切です。 また、転倒や事故のリスクを減らすために、家の中や外出先での環境調整も重要です。
4.骨折の症状
骨折の症状は、骨折の部位、程度、種類、年齢などによって大きく異なります。 骨折を疑わせる代表的な症状としては、以下のものがあります。
- 痛み
- 骨折部位に強い痛みを感じます。
初めは鈍い痛みでも、時間経過とともに激しくなる場合もあります。
動かす、触れる、体重をかけるなど、患部に負担がかかると痛みが強くなります。
- 腫れ
- 骨折部位周辺が腫れてきます。
これは、骨折に伴う炎症反応によって、患部に血液やリンパ液が集まるために起こります。
- 皮下出血(あざ)
- 骨折部位周辺の皮下組織で出血が起こり、皮下に青あざが出ることがあります。
出血の範囲や程度は、骨折の程度や部位によって異なります。
- 変形
- 骨折部位の骨が本来の位置からずれてしまい、腕や脚などが変形してしまうことがあります。
特に、転位を伴う骨折の場合に起こりやすく、見た目にも明らかな変形が現れることがあります。
- 異常可動性
- 骨折部位の骨が不安定になり、本来動かない方向に動いてしまうことがあります。
例えば、腕の骨が折れた場合、本来は曲がらない方向に腕が曲がってしまうことがあります。
- 機能障害
- 骨折部位の痛みや腫れ、変形などによって、関節の動きが悪くなったり、力が入らなくなったりします。
例えば、足の骨を骨折した場合、歩行が困難になることがあります。
- その他
- 骨折部位から音がする(クリック音など)。
骨折部位が熱く感じる。
しびれや麻痺(神経損傷を伴う場合)。
上記のような症状が見られる場合は、骨折の可能性がありますので、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。 自己判断で放置すると、症状が悪化したり、変形治癒といって、骨が曲がったままくっついてしまう可能性もあります。
5. 骨折の検査方法
骨折の疑いがある場合、医師は、問診、視診、触診などを行い、骨折の部位や程度を推測します。 その後、画像検査などを行い、確定診断を行います。
5-1. X線(レントゲン)検査
骨折の診断に最も広く用いられている検査です。
骨折の有無、骨折線の方向や位置、骨折の程度、関節のずれなどを確認することができます。
通常は、骨折が疑われる部位の2方向(正面と側面)から撮影を行います。
5-2. CT検査
X線検査よりも詳細な骨の状態を把握することができます。
特に、複雑な骨折、関節内骨折、脊椎骨折、骨盤骨折などの診断に有用です。
立体的に骨の状態を観察できるため、骨折の程度や位置、周囲の組織への損傷などを正確に評価することができます。
5-3. MRI検査
骨だけでなく、筋肉、靭帯、腱、軟骨、神経などの軟部組織の状態を詳しく調べることができます。
特に、靭帯損傷や軟骨損傷を伴う骨折、脊髄損傷の疑いがある場合などに有用です。
骨折の治癒過程を評価するのにも役立ちます。
5-4. 血液検査
骨折の診断に直接役立つわけではありませんが、以下の目的で実施されることがあります。
- 全身状態の把握
- 貧血や栄養状態などを確認します。
- 感染症の有無
- 炎症反応の有無を確認します。
- その他の病気の有無
- 骨粗鬆症などの検査を行います。
5-5. 超音波検査
乳幼児の骨折や、靭帯や腱などの軟部組織の損傷を評価する際に用いられることがあります。
放射線被曝がないため、妊婦や小児でも安心して検査を受けることができます。
医師は、これらの検査結果を総合的に判断して、骨折の診断を行います。 また、必要に応じて、他の専門医に紹介されることもあります。
6.骨折の治療方法
骨折の治療方法は、骨折の種類、部位、程度、年齢、合併症の有無などによって異なります。 大きく分けて、「固定療法」「手術療法」「リハビリテーション」の3つの治療法があり、これらを組み合わせて治療を進めていきます。
6-1. 固定療法
骨折部位を安静させ、骨が正しくくっつくように、ギプスや装具などで固定する方法です。 比較的軽度の骨折や、子供の骨折に多く用いられます。
- ギプス固定
- 骨折部位をギプスで完全に固定する方法です。
ギプスは、骨折部の安静を保ち、骨がずれるのを防ぎます。
骨折部の腫れが引くまで、一時的にギプスを巻いて、その後、本格的なギプスに巻き直すこともあります。
- 装具固定
- 骨折部位を金属製の装具やプラスチック製のサポーターなどで固定する方法です。
ギプスよりも軽量で、通気性も良いため、日常生活動作を行いやすいというメリットがあります。
関節の動きを制限することで、骨折部位への負担を軽減し、骨癒合を促進します。
固定期間は、骨折の部位や程度によって異なりますが、一般的には4週間~3ヶ月程度です。
6-2. 手術療法
骨折部のずれが大きい場合や、関節内に骨折が及んでいる場合、神経や血管を損傷している場合など、固定療法では十分な治療効果が得られないと判断された場合に、手術療法が選択されます。
- 金属固定術
- プレート、スクリュー、髄内釘などの金属を用いて、骨折部を直接固定する方法です。
骨折部を安定的に固定できるため、早期の機能回復が期待できます。
- 人工骨頭置換術
- 股関節や肩関節などの骨折で、関節の破壊が大きい場合に、損傷を受けた骨の表面を人工関節に置き換える手術です。
高齢者や骨粗鬆症などで、骨癒合が難しい場合に有効な治療法です。
手術療法は、固定療法に比べて身体への負担が大きいため、患者様の年齢や全身状態、骨折の程度などを考慮して、慎重に判断する必要があります。
6-3. リハビリテーション
骨折の治療において、リハビリテーションは非常に重要な役割を担っています。 骨折が治癒した後も、関節の動きが悪くなったり、筋力が低下したりすることがあります。 リハビリテーションを通して、関節可動域の改善、筋力強化、歩行訓練などを行うことで、早期の社会復帰を目指します。
執筆者

セラピストリーダー/理学療法士
2003年 理学療法士免許を取得。急性期・回復期・維持期病院、および生活期におけるリハビリテーションの臨床現場で理学療法士として勤務。さらに、未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センターや国際協力機構での職務を経験。
2025年 プライベートSTROKEリハビリスタジオ re-HAVE セラピストリーダーに就任。
これまで、脳血管・運動器疾患を中心に幅広いリハビリテーションの臨床場面に従事。修士・博士課程や研究センターでは、脳卒中後片麻痺者の歩行動作やバランス能力、上肢の運動機能に関する研究に取り組む。