足のつっぱり (痙縮)|脳卒中後の下肢痙縮にみられる典型的なパターン

脳梗塞・脳出血後のリハビリに特化した、京都・四条烏丸にある自費リハビリ施設「re-HAVE(リハブ)」の木村です。
- このコラムでは、
- 「麻痺した足がつっぱる」
「歩いているとつま先がひっかかる」
「足の裏が地面につきにくい」
「筋肉の緊張が高くて足が痛い」
といった症状でお困りの方に、下肢の痙縮パターンという内容についてお届けします。
痙縮とは?
脳卒中や脊髄損傷など、上位運動ニューロン (中枢神経系内の、運動指令を出す神経) の障害によって起こる、筋肉の異常な緊張状態 (筋緊張の亢進) です。速度依存性の伸張反射亢進 (筋を急に伸ばすと、反射的に過剰に収縮する) が特徴です。
つまり、
脳や脊髄がダメージを受けたことにより、自分の意思とは関係なく、筋肉がつっぱったり、勝手に力が入りすぎたりする状態のことです。特に関節を動かそうとすると、筋肉が抵抗してスムーズに動かしにくくなるのが特徴です。[
痙縮とよく似た症状の違い
名称 | 特徴 |
痙縮(けいしゅく) | 筋肉がつっぱり、速く動かそうとすると強く抵抗される。 脳卒中の後などによく見られる。 |
固縮(こしゅく) | 筋肉が持続的に固くなり、速度に関係なく関節が動かしにくい状態。パーキンソン病などで見られる。 |
筋緊張亢進 | 筋肉に力が入りすぎて、常にこわばったような状態になる。 |
筋緊張低下 | 筋肉の緊張が低下する状態 |
弛緩 | 重度に筋肉の緊張が低下する・筋がだらんとして動かせない状態 |
ジストニア | 勝手に筋肉が縮こまり、体がねじれたり、変な姿勢になってしまう。 |
痙縮にみられる主な症状
痙縮によって以下のような症状が現れます。
- 筋肉のつっぱり・こわばり
- 自分で動かそうとすると抵抗を感じ、他人が関節を動かそうとしても抵抗が生じます。
- 動きの制限
- 足首を上向きに動かせないなど、関節の動く範囲が狭くなり、自然な歩行や動作が困難になる。
- 痛みや不快感
- 強い痙縮は筋や腱を引っ張り、痛みを伴うこともあります。
- 特定の筋に偏った過活動
- 例えば、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の痙縮により足先が下に向く (尖足) になります。
これらの症状は、単なる「筋肉の硬さ」ではなく、運動機能や生活動作に影響を及ぼします。
痙縮がもたらす運動パターンの変化:シナジー (共同運動パターン)とは?
下肢では主に、共同運動の伸展パターンと呼ばれる現象が優位に出現します。
これは次のような筋活動によって構成されます。
関節の運動方向 | 主に痙縮が起こる筋肉 | 症状の特徴 |
足関節底屈(足首つっぱり) | 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)、後脛骨筋 | 足首がつま先立ちのように固まり、足底が地面につきにくくなる。 例:歩行時につま先が引っかかりやすい。 |
足部内反 | 後脛骨筋、足趾屈筋など | 足先が内側に向き、内反(つま先が内側を向く)姿勢になる。 例:バランスが悪く、転倒しやすい。 |
膝関節伸展 | 大腿四頭筋 | 膝が伸び切ったまま曲げにくくなる。 例:歩行時の膝の屈曲が制限される。 |
股関節伸展・内転・内旋 | 大殿筋、ハムストリングス、内転筋群など | 足全体が内側に入ってしまう。 例:スムーズに立ち上がりにくくなる |
痙縮が日常生活や動作に与える影響
- 1. 歩行能力の低下
- 下肢の痙縮は、筋の過緊張や共同運動パターン(伸展パターン)を引き起こし、歩行速度の低下など効率的な歩行を困難にします。
具体例:
◎ 足先が下に伸びたまま(尖足) → かかとが地面につかず、つま先で歩くようになる
◎ 膝がまっすぐに固まりやすい → 膝が曲がらず、分回し歩行** やつま先が引っ掛かるような歩き方になる
◎ 股関節が内側にねじれた状態になる → 身体を支えにくく歩きが不安定になる
**分回し歩行 について、詳しくは、過去のコラムもぜひご覧ください
https://re-have.jp/blog-detail/post-934/
- 2. バランス障害
- 足の筋肉が過緊張していることにより、重心の位置の調整が難しくなり、バランスを保持することが難しくなります。
具体例:
外出時、混雑した場所での転倒リスクが大きくなったり、方向転換時や不整地を歩く際にふらつきや転倒に繋がりやすい
- 3. 椅子からの立ち上がり困難
- 膝や足首が硬くなり、伸びきる (=曲がりにくくなる) ことで、椅子から立ち上がる動作が努力性になったり、動きがぎこちなくなります。
具体例:
トイレの便座や椅子から立ち上がる時、重心を前に移動できないことによって、腕の力で立ち上がろうとしてしまう。
- 4. 階段や段差の上り下りが困難
- 足が突っ張り足の関節が曲がりにくくなることによって、足を段の上に持ち上げる動作が困難になりやすいです。
- 5. 靴の着脱や服を着替える動作の障害
- 痙縮により足全体の関節が硬くなり柔軟に動かすのが難しくなると、ズボンを履いたり足元にリーチして靴・靴下や装具を履くことが難しくなります。
具体例:
体や足全体を曲げて靴や靴下を履くことが難しい
足を持ち上げたり交差したりする動きが難しく、ズボンの脱ぎ履きが困難
下肢の痙縮に対するリハビリ
下肢の痙縮に対するリハビリには、筋緊張の軽減だけでなく、動作や生活の向上を目的とした多角的なアプローチが必要です。以下に、臨床で行われる代表的なリハビリをまとめました。
1. ストレッチ・他動関節運動
- 目的:筋肉の短縮や関節拘縮の予防、筋緊張の一時的軽減
- 方法例:ふくらはぎの筋肉 (腓腹筋やヒラメ筋) に対する持続的ストレッチ
- ポイント:反復的かつ継続的な実施により、短期間の効果で終わってしまわないことが重要
2. 選択的運動 (分離運動) の促通
- 目的:正常運動パターンの再学習
- 方法例:座った状態で、足首を上げる (足関節背屈) 運動
- ポイント:正しい運動パターンを繰り返し練習し、視覚などによるフィードバックを取り入れることが重要
3. 立位・歩行練習(荷重練習)
- 目的:機能的な抗重力筋の筋活動の再獲得 (立つ・歩くなど重力に抗した姿勢や動作時に使う筋肉の活性化)
- 方法例:立った姿勢の時に、足底全体を地面に付けて体重をかけることで、つま先立ちや足の裏が浮かないように体重支持を促す練習
- ポイント:機能的な場面(歩く・立つなど)で持続的に痙縮を抑えることが重要
4. 課題指向型練習
- 目的:機能的な動作を繰り返し練習することで脳の神経可塑性を促し、痙縮を改善しながら下肢機能を向上させる
- 方法例:正常な歩き方に近い足の動きを繰り返し練習することで、正しい運動パターンを再学習する
- ポイント:正しい動作パターンを身につけるため、フィードバックや修正を取り入れる
5. 装具療法 (短下肢装具など)
- 目的:歩行時などの異常パターンを抑制し、関節の正常な動きを促進、安全な動作をサポートし、関節の正しい位置を保持する
- 方法例:歩行時に短下肢装具を使用することで、足先が地面に引っ掛かるのを防止する
- ポイント:歩行の安定性やエネルギー効率を高めるために重要
下肢の痙縮に対するリハビリでは、筋肉の緊張を和らげるだけでなく、日常の動作の中で機能的に下肢を動かせるようにリハビリをすすめることが重要です。
当施設「re-HAVE (リハブ)」では、お客様のお悩みやご希望を丁寧にお伺いし、マンツーマンでしっかりサポートいたします。専門的な視点で一人ひとりに合わせた対応を心がけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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