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パーキンソン病と大脳基底核 −脳と体のつながりを理解する−

パーキンソン病と大脳基底核 −脳と体のつながりを理解する−

秋の訪れを少しずつ感じる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
京都・四条烏丸にある自費リハビリ施設「re-HAVE(リハブ)」の理学療法士、木村です。私たちの施設では、脳卒中(脳梗塞・脳出血)やパーキンソン病といった神経疾患に対して、専門的かつ個別性の高いリハビリを行っています。

今回のコラムでは、「パーキンソン病と大脳基底核」をテーマについてお伝えしていきます。

大脳基底核とは


大脳基底核は、大脳の深部にある神経細胞の集まりで、運動の開始・調整、学習、情動にも関与する重要なシステムです。
構成要素は大きく以下のようにまとめられます。

大脳

  • 淡蒼球(外節・内節)
  • 線条体 (尾状核・被殻)

 中脳

  • 黒質(緻密部・網様部)

 間脳

  • 視床下核

大脳基底核の主な役割

1. 運動制御
  • 随意運動の開始や終了を適切にコントロールする。
  • 不必要な筋活動を抑え、必要な運動だけをスムーズに行わせる。
  • 運動の強さやタイミングを調整して、ぎこちない動きにならないようにする。

→大脳基底核は「体の動きの調整役」です。動き始めるきっかけを作ったり、動きを止めたり、動きの強さや速さを整えたりします。これによって、私たちはスムーズで自然な動きをすることができます。

2. 運動学習と習慣化
  • 新しい動作を繰り返すうちに効率よく行えるようにする。
  • 自転車の運転や歩行のように、意識せず自動的にできる「習慣動作」へ移行させる役割を持つ。

→新しい動きを練習するとき、大脳基底核はその動きを覚え、くり返すことでスムーズにできるようにします。
たとえば、自転車の運転や楽器の演奏は、最初は難しくても、練習するうちに「体が自然に覚える」ようになります。これを支えているのが大脳基底核です。

3. 認知機能の調整
  • 注意を向ける対象を切り替えたり、複数の作業を順序よく処理したりするのを助ける。
  • 行動計画や意思決定をスムーズに進めるため、前頭前野の働きをサポートする。
  • 短期的な記憶(ワーキングメモリ)と連携し、必要な情報を使いながら行動を選択する。

→体の動きだけでなく、頭の中の「作業の切り替え」や「段取り」にも関わっています。たとえば、料理をするときに材料を準備し、順番に調理していくような流れをうまく進めるのを助けます。また、注意をどこに向けるかを切り替える働きもあります。

4. 動機づけ・感情調整
  • 報酬や快感を基準に「やる価値がある行動」を選びやすくする。
  • 意欲やモチベーションの高まりに関わる。
  • 感情体験と結びつけることで、学習や行動の強化を促す。

→大脳基底核は、快感や報酬といった感情とつながっています。「これは楽しい」「これをやると達成感がある」と感じたときに、その行動を続けるように後押しします。反対に、やる気が出ないときにはこの働きが弱まってしまいます。

パーキンソン病による大脳基底核の変化

パーキンソン病では、大脳基底核にある「黒質」から分泌されるドーパミンが不足することによって、大脳基底核の働きが低下し、体を思い通りに動かすことが難しくなる病気です。

パーキンソン病特有の運動症状は以下の通りです。

  • 動作の遅さ:動き始めが遅い、スムーズに動けない、歩きにくさ(小刻み歩行・すくみ足歩行)
  • 筋肉のこわばり:手足が硬くなる、関節の動きがぎこちない
  • 振戦:安静時に手や足が震える
  • 転びやすい (姿勢保持障害)
  • 自動化の低下:普段の生活動作を意識して行う必要がある
  • デュアルタスクの困難:歩きながら会話する、料理しながら片付けるなどが難しい

大脳基底核の働きから見えてくる、リハビリの意味

上記の「大脳基底核の主な役割」にある ”4つの働き” を知ることで、なぜそのリハビリが必要なのかが見えてきます。

ここからは、先ほどの「大脳基底核の主な役割」の1〜4の役割ごとに『パーキンソン病でどう変化するのか』『リハビリでどのように工夫できるか』を対応させてまとめます。


1. 運動制御 → リズム歩行

大脳基底核の役割
動き始めの合図を出し、運動のタイミングや強さを調整します。
パーキンソン病での変化
ドーパミン不足で「動き出す信号」が弱まり、歩き出しや動作がぎこちなくなります。
リハビリの意味
音楽やメトロノームのリズムを「外からの合図」にすることで、大脳基底核が弱っていてもリズムに合わせて体を動かしやすくなります。
「リズムに合わせて歩くのは、大脳基底核が出しにくくなった“動き始めの信号”を外から補う方法です。」



2. 運動学習と習慣化 → 動作練習と外からのきっかけ

大脳基底核の役割
新しい動きを覚えて、繰り返すうちに自動的に「自然にできる」ようにします。
パーキンソン病での変化
動きの「自動化」が難しくなり、普段の動作でも一つひとつ意識しないとできなくなります。
リハビリの意味
動きを細かく分けて練習したり、「声かけ」「床の目印」など外からのきっかけ(キュー)を使うことで、自動化が難しい部分を補います。
「階段を上がるときに『右・左』と声を出すのは、大脳基底核の“自動で進める力”を外から補っているのです。」



3. 認知調整 → デュアルタスク練習

大脳基底核の役割
注意を切り替えたり、作業の順番を整理したり、二つのことを同時にこなすのを助けています。
パーキンソン病での変化
「歩きながら会話する」など、二つのことを同時にするのが難しくなり、転倒の原因にもなります。
リハビリの意味
「歩きながら数を数える」など、簡単な二重課題を練習することで、注意の切り替えや段取りを助けます。



4. 動機づけ・感情調整 → 趣味活動や達成感の工夫

大脳基底核の役割
「やる気」や「楽しさ」といった気持ちを生み、行動を続ける力につなげています。
パーキンソン病での変化
意欲がわきにくくなり、好きだったこともおっくうに感じることがあります。
リハビリの意味
趣味や楽しさを取り入れたり、達成感を味わえる課題を選ぶことで、脳の「やる気スイッチ」を外から押してあげます。達成感を味わえるリハビリは、意欲を生み出す大脳基底核の働きを外から支えます。



大脳基底核の役割とリハビリの工夫のまとめ

大脳基底核の役割パーキンソン病での変化リハビリの工夫
1. 運動制御(動きの開始・調整)動き出しが遅い、転びやすいリズム歩行、バランス訓練、合図を使う
2. 運動学習と習慣化自動的に動けない、ぎこちない動作を分けて練習、声かけや床の目印を利用
3. 認知機能の調整二つのことを同時にしにくいデュアルタスク練習(歩きながら数えるなど)
4. 動機づけ・感情調整やる気が出にくい趣味や楽しい活動を取り入れる、達成感を重視



私たちのリハビリ施設「re-HAVE」では、お一人ひとりの「達成したいこと」に合わせた最適なプログラムをご提案しマンツーマンで丁寧に実施しています。

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